2010年9月15日水曜日

東山道武蔵路跡保存整備工事に関する意見書を市長・教育長に提出

旧第四小学校跡地内の東山道武蔵路跡の保存整備工事が10月から始まるに当たり、当会から大急ぎ整備工事に関する意見書を国分寺市長と教育長へ提出しましたのでご報告いたします。

東山道武蔵路の保存・整備計画の実施設計が突然変更された経緯等は、ブログ「真姿の泉TODAY」の[[トピックス-3]歴史・文化財をめぐる風景]にまとめてあります。ご参照ください。

東山道武蔵路跡保存整備工事に関する意見書

2010年9月14日
国分寺市長 星野信夫様
教育委員会教育長 松井敏夫様

国分寺・名水と歴史的景観を守る会(11名連名)

 このたび国分寺市内の東山道武蔵路の遺構が国指定史跡「武蔵国分寺跡」に追加されることになったことは、大変に喜ばしいことであります。
今回の指定区画のうち旧鉄道学園跡地の部分は平成7年に幅が12mで長さが340mの直線道路の遺構であることがわかりました。この全国でもはじめての大規模な古代道路の発見というニュースは多くの人々の関心と注目を集めました。そしてこの遺跡が都市計画事業により消滅の危機に瀕した時、さまざまの分野の市民が立ち上がって広く保存運動を展開し、その結果行政と事業者の理解を得て遺跡を守ることができたという経緯があったことは周知のことであります。

さてこの度、新たに旧第四小学校跡地で発見された東山道武蔵路遺構もあわせて指定されたことにともない同区画に歴史公園をつくるという「旧第四小学校跡地に所在する古代東山道遺構の保存・活用整備計画」が平成22年2月に教育委員会より公表されました。私たちはこの計画案に対し以下の見解を表明致します。


①私たちは教育委員会が掲げた3つの遺構の活用整備の基本方針すなわち1.古代道路のイメージを重視した歴史学習の場としての活用、2.周囲の環境との調和を重視した潤いある公園空間としての活用、3.国分寺らしい郷土文化の形成という3点がそのように実行されるのであればこの計画案を全面的に支持するものであります。
私たちは旧鉄道学園跡地の遺構と旧四小跡地の遺構とは切り離して考えることはできないと思っています。340mの直線道路遺構がいったん地下に消えまた再び旧四小跡地で60mの直線道路遺構に続いていくことを視認できるという感動を大事にしたいと思います。そのためには旧鉄道学園跡地の遺構と旧四小跡地の遺構は同じような道路標示がなされねばなりません。
その意味で計画案の【遺構整備方針】にある1、三期に及ぶ道路跡の変遷や特殊遺構などの歴史的事実をわかりやすく表現する。2、北側の旧国鉄中央鉄道学園跡地の延長部であることを理解させるために、都史跡部分と遺構表現手法に統一性をもたせるという2点には全く同意するものであり、7月4日5日の市民説明会に提出された実施設計素案はこの趣旨を生かしたものとして評価できました。
しかしながら8月20日21日に示された新たなる設計素案はこの【遺構整備方針】の精神に反した後退した案だと考えます。
すなわち8月案は7月案と異なり道路遺構の部分が芝生で、芝生の両側が、西側のマンションと東側の介護老人保健施設側から利用できる舗装の遊歩道という構造になっています。つまり、道路遺構の部分が草地で、その両側が舗装道路になっていてまさにあべこべです。これでは草地の部分が古代道路だとは視覚的に捉えにくいものとなります。
「歩きやすさ・安全面を考慮して弾性舗装に。遺構外は全面芝生に」という市の遺構整備計画がなぜひっくりかえってしまったのでしょうか?
道路面を芝生にするか、弾性舗装にするかはきわめて重要なことだと認識します。
一つは旧鉄道学園跡地の遺跡との整合性の問題、もう一つは見学者、散策する人々が道路遺構を歩きながら古代に思いをはせるには弾性舗装が芝生よりよくかつまた道路遺構の表示にも適切だと判断します。したがって私たちは7月案に戻すよう強く求めます。

②憩いのある公園造り、これも大事なことだと思います。しかし今回は街区公園とは異なりあくまでも歴史遺産の保護と活用、学習の場そしてエコミュージアムとしての史跡公園を造ろうという話で、一般的な公園を造ろうということではありません。ましてや特定の人々のものでもありません。
市内にある東山道武蔵路の遺跡は国分寺市民の遺産から東京都民の遺産となり、さらに今や国民の遺産となりました。この国民の遺産をどう保存し後世に伝えていくかという高度からの視点をもつことが必要だと思います。
全国にも例をみない大規模な古代道路遺構の保存を基軸としたこの歴史公園が当初の基本方針どおりに出来上がるならば国分寺市の文化財保護に対する施策がこれまで以上に評価されると確信します。
市においては原点に立ち返りこの歴史公園構想を当初の計画に基づき進めていくよう切に要望いたします。
以上

2010年9月10日金曜日

第6回公開講座報告要旨(2010年7月4日実施)

7/4の第6回公開講座報告がまとまりました。

■国分寺・名水と歴史的景観を守る会第6回公開講座報告要旨
  日時:2010年7月4日(日)14:00~16:30 会場:国分寺労政会館3階第3会議室
  講師:川端良子さん(東京農工大学国際センター准教授、当会会員)
  演題:旧ソビエト連邦の農業政策による中央アジアのアラル海の縮小
  会費:1,000円 主催:国分寺・名水と歴史的景観を守る会
  参加者:28名(会員12名、非会員16名)


・川端さんはアラル海のあるウズベクスタン共和国とカザフスタン共和国の国情について美しい映像で解りやすく紹介し、アラル海縮小の開始から、塩水濃度上昇が起るまでの時間に湖の中でどの様なことが起ったかを述べられました。

・アラル海は流出河川のない内陸閉鎖湖で、大アラル海と小アラル海に分かれている。シルダリアが流入する北の小アラル海(カザフ共和国)とアムダリアが流入する大アラル海(カザフとウズベク)である。かつて世界第4位を誇っていた当時の湖面積は北海道と同じくらいの大きさで、水深は琵琶湖の二分の一強。しかし1960年代から縮小を続け、現在では回復が望めないほどの状態になっていることが、衛星写真を見るとよく判る。

・その原因は、1950年代に始まった旧ソビエト連邦の農地開発、綿花生産を意図した「緑の革命」と称する上流地域での大規模灌漑農業計画に基づく流入河川からの大量取水です。

・アラル海は砂漠の中にあり、お金にならない湖だったが、1950年代のソビエト連邦科学アカデミーの経済学者は、砂漠を緑化し、綿花栽培や小麦栽培をすれば、漁業収入の5倍以上の収入になる。そのためにアラル海がなくなっても構わない。もし、問題が起これば、北側の川から水路を作って水を流せばいいとの研究論文を発表していた。

・すでに40年以上に及ぶ大規模灌漑農業の結果、アラル海の砂漠化が進み塩害を引き起こし、かつて生息していた生物たちはほぼ全滅、湖の面積は半分以下に縮小、海岸線の後退、塩分や重金属濃度の上昇による漁業の壊滅、残留農薬による飲料水汚染など深刻な環境汚染問題を引き起こしている。

・もはや大アラル海の回復は不可能であるが、小アラル海はまだ回復の見込みがある。2005年小アラル海を救うために両アラル海の境に大規模堤防を設けシルダリア側の流量回復に努めたため、小アラル海の河口付近では徐々にではあるが漁業が行われるようになり、湖岸では植林が進んでいる。また、汚染飲料水による健康被害を改善するため、使用している農薬を人体に安全な化学肥料に変えるなど様々な試みがなされつつある。

・大アラル海の消滅は止むなしというのがウズベキスタン共和国の基本姿勢。綿花栽培をはじめとするアムダリア流域での農業や都市部への水供給を犠牲にできないこと、干上がった湖底からの天然ガス開発が開始され、新たな国家収入が見込まれることなど国家としての生存を優先せざるを得ない事が理由。

・大規模な自然改造を人間が行おうとした結果、アラル海は縮小するべくして縮小したとのことです。これらの環境問題の解決には科学面だけでなく、政治や経済面からの努力が必要だと強調されました。

・その一環として、2009年9月から東京農工大学はJICA(国際協力機構)の支援事業により、ウズベキスタン国立養蚕研究所と共同で「ウズベキスタン共和国シルクロード農村復興計画―フェルガナ州における養蚕農家の生活向上モデル構築プロジェクト―」を開始した事を紹介。

・川端さんは学生時代からアラル海に関心を持ち、1989年から調査を開始。アラル海の研究で博士号を取得されています。

・質問1.農業用水に地下水は利用しないのか?→水深10メートルくらいの被圧地下水を電気で汲み上げている。表層地下水を飲料にしているが、水質は良くない。素掘りの灌漑水路には葦が生えている。水田と言っても輪作するため、葦と一緒に生え、日本の田圃の様ではない。

・質問2.冬用に溜池を作ってはどうか?→アラル海を見捨て、アラル海の南地域に干潟を作り、営巣地にしている。溜池を作って農業をしようとする気はない。

・質問3.綿花の代わりに、サボテンなど乾燥地に強い植物を植える計画はあるか?また、木材から紙を作ってはどうか?→サボテンなどは不可能。南アフリカ原産のアイスプラントはある。トマト等果樹はおいしい。ドライトマトも大変美味である。桑から作った桑の紙サマルカンドペーパーがある。

・質問4.日本人の思う川と中央アジア人の考える川との違いは?→湯水のような感覚は無いが、噴水は大好きです。

質問5.日本の農業をどう思うか?→自給率50%を目指すべきで今が立ち上がる時期ではないか。

・公開講座当日の川端さんは、ご講話にふさわしいウズベキスタン共和国フェルガナ州マルギラン市特産のマルギランシルク製の衣装で登場。色は絹独特の光沢が大変美しいピーコックグリーンでした。熱のこもったご講演と質問を時間通り終え、16時30分に閉会しました。

・参加者からは「アラル海縮小の歴史、原因を科学者の立場から分析してもらい大変参考になった」「アラル海の縮小という状況の中で地元の人々がその環境に順応して懸命に生活を建てなおそうとしている現実が良く分った」等の感想が寄せられました。

・名水の会からの公開講座講師への謝礼金は、全額名水の会へご寄付くださいました。川端先生のご厚情に心から深謝いたします。ありがとうございました。

・公開講座終了後、場所を国分寺市南町3丁目の「居酒屋せが和」へ移し、17時から20時まで懇親会を開催。和やかな愉しいひと時を過ごしました。懇親会参加者は15名。

ご講話を伺い、今求められている大きな課題は、地球全体に求められている持続可能な発展への知恵と行動だと痛感しました。

2010年9月2日木曜日

名水の会9月定例会で、湧水・地下水保全条例と緑の基本計画見直しのパブコメについて検討します(9/10開催)

湧水・地下水保全条例と緑の基本計画見直しの案がまとまり、今日から9月30日までパブリックコメントを受け付けています。どのようなコメントを出すべきか、皆さんで検討する機会をもちましょう。

日時:2010年9月10日(金)14:00~17:00
会場:国分寺市本町・南町地域センター 和室(1.2)
主催:国分寺・名水と歴史的景観を守る会

出されている案の中身もさることながら、案策定の進め方や検討協議会のあり方も問題があります。「市民参加」が形骸化しつつある危機を覚えますが、パブリックコメント自体も有効な仕組みにするべく、皆さまのお力を発揮していただければと思います。

2010年9月1日水曜日

名水の会 7/27,8/5の検討会の報告要旨(事務局からの報告8/28)

二回にわたる検討会は、9月のパブリックコメント実施を前に、国分寺市緑の基本計画見直し等検討協議会委員藤木千草さんの発案での開催。7/27は湧水・地下水保全条例素案に関して8/5は、緑の基本計画に関しての検討、会場の閉館時間間際まで熱心な意見交換が続きました。以下要旨です。

◆検討会 国分寺らしい『湧水・地下水保全条例』をつくろう ~9月実施のパブリックコメントに向けて~
日時:2010年7月27日(火) 18:30~22:00  会場:本町・南町地域センター集会室・学習室
出席者:12名

藤木千草さんの資料:
レジュメ、検討協議会での検討項目一覧表、(仮称)国分寺市湧水・地下水保全条例素案、国分寺市湧水・地下水保全条例素案(修正案)、小金井市の地下水及び湧水を保全する条例、小金井市民堀井光夫さんの参考意見

畑中久美子さんの資料:
湧水・地下水保全条例策定の背後で進む規制緩和の動き、震災時の水確保「昔の井戸」で足りるのか、国分寺市地域防災計画(平成19年3月国分寺市防災会議作成)

梁川律子さんの資料:
災害時の水(国分寺市の断水率、生活用水必要量、災害時の水備蓄状況―国分寺市くらしの安全課のデータより)

検討会内容:
1.2010年6月30日開催に第9回検討協議会に提出された条例素案(修正案)の読み合わせ

2.藤木委員よりこれまでの経過説明と問題点の提起
①「目的」の項がわかりにくい ②地下水の定義の件 ③罰則規定がない 
④個人所有井戸の災害時利用の項目が突然削られた ⑤湧水等保全検討会議の有効性

3.まちづくり条例との関係について国分寺市まちづくり市民会議委員畑中久美子さんからのコメント
①現在、国分寺市緑の基本計画見直し等検討協議会で検討されている「国分寺市湧水・地下水保全条例」はあくまで理念条例なので、開発規制は「まちづくり条例」の開発整備基準に委ねられる。しかし、現在まちづくり条例の第一次改正案が議会で継続審議中で、更に第二次改正案も加わることになるため、最終議決までかなりの時間がかかる。
②行政が変更しようとしているのは、まちづくり条例別表第3(第50条、第71条)開発事業の整備基準。
③国分寺市まちづくり条例改正大網案は庁内会議で作成される。その際、市民会議の答申に沿う内容になるとは限らない。第一次改正案に第二次改正案が加わるので、議決されるまでには相当な時間がかかることは必至。その間、行政の「規制緩和改正案」が運用されることがないように監視をして行かなくてはならない。

4.各条項に関する意見交換
・第1章総則「目的」の項は、前文的だからもっと簡潔にした方が良い。
・「目的」の項は、長い長い一文なので判りにくい。
・第3章湧水等保全検討会議のイニシャティブは市長しか取れないとなると問題である。この検討会議とまちづくり市民会議との関係はどうなるのか?
・水循環の点では弱いかもしれないが、湧水保全を特化した点で良いのではないか。
・深層地下水を切り離したのは、事業に絡むからで、あくまで湧水保全に限定した。
・実効力担保の為の細則は必要ないか?

◆緑の基本計画見直し等検討協議会での水と緑の配置方針・緑地保全計画案等に関する検討会
日時:2010年8月5日(木) 18:30~20:00  会場:本町・南町地域センター集会室・学習室
出席者:8名

藤木千草さんの資料:
①国分寺市緑の基本計画見直し等検討協議会第8回資料
緑地保全及び緑化推進のための施策(修正版) 平成22年5月21日
②国分寺市緑の基本計画見直し等検討協議会第9回資料
緑化を重点的に推進する地区の設定(案) 平成22年6月30日
③国分寺市緑の基本計画見直し等検討協議会第9回資料
計画の推進に向けて(案) 平成22年6月30日
④国分寺市緑の基本計画見直し等検討協議会第8回検討項目
国分寺市緑の基本計画見直し等検討協議会第9回検討項目

藤木委員からの説明後、意見交換。
・5月6日付で協議会委員藤木千草他1名連名で井上課長宛に提出した申し入れ書に対し、井上課長から5月19日の回答があったが、この件に関しては8月23日開催の第10回協議会で報告されることになっている。
・検討協議会のあり方にも協議会委員のあり方にも問題がある。都合により辞めた委員の交替はないのか。
・今回検討協議会で見直される基本計画は20年という長い基本計画であるから、 「・・を検討します」という表現はないだろう。具体的に言えば、緑地保全及び緑化推進のための施策(修正版)2.緑と水の保全・活用④用水及び野川の保全・復元の項で「・・・湧水の復元・親水性の向上に配慮した整備を検討します。」とあるが、「・・・整備します。」と言い切るべきである。
・10年前の平成13年に策定された緑の基本計画の評価なくしての見直しはない。
・検討協議会委員の意見の位置づけにも問題がある。辞退した委員2名の交替はないのか。
・姿見の池緑地整備に関しては7月16日付で都市計画事業認可された。
・次回第10回検討協議会は8月23日(月)。最終案が提示されるので傍聴をお願いします。

 9/1から9/30までパブリックコメントが実施されます。20年スパンの緑の基本計画です。たくさんの意見を出すために、皆さま9/10の検討会へご出席ください。よろしくお願いいたします。